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メジロ繁殖レポート 松山主任に聞く (2/3)

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――話は変わりますが、松山さんは非常に血統に詳しいとお伺いしています

松山主任  詳しくはありませんが、なぜか面白いことに牧場には血統を気にする人がほとんどいません。特に育成ではそういった話を聞きませんよね。

――これまで育成でお話を伺うと馬体のつくりとか乗った感じについてのお話は出ましたが、血統の話は余り出ませんでしたね。むしろ、血統のイメージは持たないほうがいいという感じがしました。その中で松山さんは血統に非常に興味を持たれていて、メジロアリスやメジロシリングの配合も松山さんが考えたとお伺いしたのですが、血統についてはどのような考えをお持ちですか

 血統については統計を重視しています。配合を選定する時には父母の仔出しの傾向も同じくらい重視しますが、基本的には統計や模倣から入るタイプです。だから、メジロシリングに関して言えば、エリモエクセルの配合を真似ています。その結果、シリングが短距離馬になったというのは不思議だと思いましたね。
 配合・種牡馬の選定に関してはオーナーブリーダーなので、博打的なことをなるべく避けたいと考えています。特に自分の中ではファーストシーズンサイヤーというのは割引して考えるようにしていますし、やっぱり生産した馬を売るわけではないので、結果が全く出ていない初年度から力を入れて付けなくてもいいのかなと思っています。
 だから、統計を見て、ざっと上位にいるような配合、この種牡馬には母父はこれとこれでという感じで考えています。
 実例としてタイキシャトルの配合選定をあげます。タイキシャトル産駒の本賞金上位馬の母父は、ほとんどがノーザンダンサー系で、しかも、ストームキャットやビーマイゲストなど米国産のがっしりした種牡馬が目立ちます。シャトル産駒は馬体が薄く出ることが多いので、幅のある母馬との配合で欠点を補いつつ、自身のスピードを伝えていると推測しました。それならサドラーズウェルズでもOKなのかなと、その結果がメジロラフィキです。うまくいけばスタミナの押さえの利いた本格派のマイラーになってくれるかなと思って付けたのですが、結果としては中距離馬になってしまいました。ラフィキの生まれた年に同配合のディープサマーがクリスタルカップを制したので、当時はそう的外れでもなかったのかなと思っていました。幅のあるノーザンダンサー系との配合は今年も行っていて、現在フレンチデピュティ肌のメジロターキッシュがシャトルを受胎中です。メジロライアンでも代用が効きそうなので、機会があれば試してみたいと思います。
 タイキシャトルに限らず、そういう母父が合いそうな種牡馬に対してはライアン肌の繁殖牝馬をあてていますね。その中で今までの配合よりも勝率を稼げればいいなと考えています。

――統計で実績重視という中で、先ほどシリングの話がありましたが、アリスは逆にカロカロというメジロ牧場では余り見ない配合となっていましたが

 そうですね。カロの3×3でした。あれは母親のメジロシルビアに自分が育成で乗っていた時の感触も理由になっています。シルビアはものすごいピッチ走法で歩幅が細かいのです。コトコトした走りなので、この走りで急に距離を延ばすような配合は無理だと思いましたし、決め手に欠ける牝馬だったので、スピード不足を補うような、多少過激なインブリードになったとしても、そのような方向を突き詰めてみようと思いました。
 カロの血統は多少気性の悪いところはありますが、その当時アドマイヤコジーン産駒はまだ走っていませんでしたから、付けてみてうまく行けばいいなと思っていました。それで牝馬が生まれたとしても、強いインブリードをもっている配合の牝馬というのは繁殖に向く傾向があるので、いいかなと考えていました。アドマイヤコジーン産駒でG1を勝ったアストンマーチャンも、スプリンターズSを見てわかるように、すごく細かいピッチ走法でした。アリスは、結果として父親と母親のタイプが似ていて、うまく噛み合ったのかなと思っています。
 でも、アリスは成績が1勝止まりですから、余り大きなことは言えません。今後もそういった方向性を出した配合ができて、その中で競走馬としての当たりを拾えればいいと思っています。


ビッグレッドファームで種牡馬生活を送るメジロベイリー。

――統計を重視して実績のある種牡馬を付けたいと考えている中で、メジロベイリーを初めての繁殖牝馬によく付けられていますね

 とりあえずベイリーという訳ではないのですが、自分のところの種牡馬であればその繁殖牝馬の傾向がつかみやすいからです。生まれたときにベイリーのこういう部分が出ているとか、あるいは母親がどれだけ出ているとか、そういうのがわかります。よく知っている種牡馬のほうがその次の配合も考えやすくなりますね。 それと極端な話、繁殖失格というのが初仔の時点でわかったとして、高額種牡馬をつけていたのでは目も当てられませんから、ベイリーを付けるのはリスク軽減の意味もあります。

――ベイリーをつけてみてその繁殖牝馬の傾向を掴んでいるということですが、ベイリーの種牡馬としての傾向は難しくありませんか

 難しいですね。産駒はすごく母親に似てきますね。特に生まれたばかりのときはそう感じますね。

――育成のほうでもベイリーの特徴を掴みづらいという話がありました

 ベイリーの産駒には手先のつくりとかに通じるものがあります。ベイリーの仔は、脚元がしっかりするのが早いので、脚元が硬くなったり柔らかくなったりしません。ベイリーの仔でクラブフットになったのは、1頭出たかなってくらいです。ここ何年か付けてみて本当に問題が少ないので、逆に脚が曲がった繁殖牝馬に付けてみたら、やっぱり次の年は脚が曲がらずに出たというのもありました。

――ちなみに今年は初めてのところではどういった繁殖牝馬につけられましたか

 メジロアダーラ、メジロカールあたりですね。

――今年から北海道にきて付けやすくなりましたが、青森にいるときは実際どのようにして種付けをしていたのですか

 ベイリーを種付けする繁殖牝馬を青森に送っていました。ですから、繁殖牝馬にベイリーを付けたいと思ったら、前の年にその牝馬を空胎にしておかないと青森に持っていけなかったので、2年がかりの計画でした。今年はメジロビクトリアに付けるために去年わざわざビクトリアを空胎にしていたのですが、逆にベイリーが青森から来てくれたので、そこまでしなくても結果として付けられましたね。
 ですから、そういう理由もあって、繁殖牝馬を空胎の中から選ぶ必要があったので、最初から空胎だった初年度の繁殖牝馬にベイリーがよく付けられていたのです。

――ベイリーを付けるにしても制限があったわけですね

 今年からは自由度が高くなりましたが、結果として今年、出産した繁殖牝馬にベイリーを付けたのは2頭だけで、メジロフラックスとメジロルバートですね。ルバートはライアンの肌ということで、ベイリーを付けることでブライトっぽく出てくれるかもしれません。確か青森のセリにもブライトっぽいベイリー産駒が1頭いましたね。

――ベイリーも種牡馬としてやっていくには、そろそろ活躍する馬が出てきて欲しいところですね

 今年は種付け数が80頭越えたらしいですからね。来年の産駒は楽しみです。

――血統的に種牡馬としてのベイリーはどう考えていますか

 産駒の傾向が掴みづらいので計画的に使いづらい部分はありますが、脚元の面に関してはすごく扱いやすいので、使いどころのある種牡馬とは思います。あと、メジロ牧場のこれまでの種牡馬、メジロディザイヤーと比べれば、確実に上だと思うので、今年、日高に来てからが勝負だと思っています。

――松山さんが種牡馬の実績として特に重要視しているものは何ですか

 種牡馬の産駒の傾向ですね。細かいデータを出してもデータの分母が小さいですから、勝ち星の多い馬をざっと拾っていって、その傾向を見ています。
 例えば、この種牡馬だったら、距離がもちそうな、あるいは長距離実績のある母親から勝ち馬が多く出る傾向があるのなら、同タイプの繁殖牝馬に付けたほうがいいのかなと考えています。

――実際、産駒が走ってみて距離が持たないなと感じる時もありましたか

 そうですね。メジロマルチネスの産駒は、父のフォーティナイナーの影響が強いせいか、距離適性は母親の影響が強いですね。何を付けても距離適性が短く出てしまいます。メジロマックイーンを付けても短い産駒が出ましたから、これは何を付けても同じだなと思ったので、途中からは距離適性が短い種牡馬を集中的に付けるように変えました。

――そういうこともあって、マルチネスには、サクラバクシンオー、アドマイヤマックスが付けられているのですね

 そうですね。それらの種牡馬は実績が手堅いですからね。ただ、理想を言えば、芝の長距離馬で仕上がりが早く、2歳で確実に勝ち上がってくれれば、レースに使いやすいと思います。短距離だとどうしても除外が多くなりますしね。

――札幌開催の短距離では除外がかなりあったようですしね

 やっぱり芝の長距離で走るのがいいですよね。

――松山さんが考える芝の長距離を狙える種牡馬といえば何ですか

 やっぱりスペシャルウィークですね。

――どういったところでしょうか

 メジロ牧場的な相馬から言うと、産駒に総じて"ゆとり"がある。ということでしょうか。うまく表現できないのですが、自分の感触としては全体的に伸びのある体形で、関節各部に余裕があり、首差しと背どおりの流れが良く、それが走る時の伸びやかなフォームにつながっていると思います。それに後躯のバネがうまく噛み合って長距離向きの全身運動を生み出していると思います。最近の長距離戦は直線勝負になりがちなので、ステイヤーにも瞬発力が不可欠です。長距離には"ゆとり"と"バネ"が必要で、スペシャルウィークは両方を持っていると思います。
メジロ牧場の競走馬はスタミナ(≒ゆとり)はあるのですが、瞬発力がありません。なんとか配合や育成・調教で補おうと努力していますが、結果が出せていません。スペシャル産駒に限って言えば、シーザリオと同じサドラー肌も居ましたし、ブエナビスタと同じカーリアン肌も居ましたが結果が出せませんでした。

――長いところではこれまではホワイトマズルも付けていましたね

 最近は付けていないですね。相性が悪いのかどうしても止まりが悪かったですね。

――松山さんは以前から亡くなってしまったアグネスタキオンを種牡馬として評価されていましたが、どういったところを評価されていましたか

 やっぱり柔らかさでしょうか。牧場の繁殖牝馬には何を付けても硬くモッサリと出てしまう傾向があるので、そういった意味で柔らかさが出るタキオンは貴重な存在でしたね。

――タキオンの産駒は育成のほうでは評判は余り良くないようですが

 世間一般のタキオン産駒より硬く出ていることと、コロンバイト、メジロフラックスなど母親から来る気性の問題もあったと思います。ただ、メジロアレグレットのときは初年度だったこともあって、タキオンの傾向がまだ分かりませんでした。それでも、メジロカムバックよりは数段柔らかかったのですが、セレクトセールで他のタキオン産駒をみるとさらに柔らかく出ていました。アレグレットはむしろ幅があってカチっとした感じで、やっぱりこれは母のドーベルから来たのかなと思っていました。
 そして、カムバックはドーベルの娘メジロヒラリーの産駒ですが、母に負けず劣らずのガチガチ産駒でした。メジロソフィアも生まれた瞬間にタフラのそのものだと感じました。ですから、これまでのメジロのタキオン産駒はすごく母系が強く出ていますね。タキオンらしくない産駒が多いです。

――母系が出すぎていてメジロではアグネスタキオンは未勝利なのですね(※9月にメジロソフィアが初勝利)

 できれば、亡くなる前にタキオンの仔どもでタキオンらしいのを出したかったという気持ちはありましたね。でも、今年のメジロジョーンズの産駒が、らしいと言えばらしいのですが、アレグレットより少しゴツいところがあるので、メジロライアンぽいところが出てしまったのかなという感じはありますね。やっぱり、そこがうちの繁殖の傾向というか、拭え切れない部分だと思います。

――そういったリーディング上位の種牡馬を付けても走らないという状況で、サクラバクシンオーはよく走っていますし、頻繁に付けていますね

 それも傾向をみての結果です。サクラバクシンオーが出だしのときに結構モガミの肌でも走っている馬がいて、日本の土着の血統でも勝ち上がっている馬がすごく多かったのです。たぶん、うちの繁殖牝馬にも合うなと思って、サクラバクシンオーは比較的いい繁殖には付けるようにはしていますね。

――最近は全体の成績は落ちてきていますが、今もサクラバクシンオーは付けていますか

 毎年欠かさず付けていますね。

――最近だとワイルドラッシュもよく付けていますよね

 そうですね。というか結果として勝ち上がっているので目立つのもありますが。今年は付けていません。いろいろ理由はありますが、ワイルドラッシュ産駒は輸入前のマル外が8割ほど勝ち上がっていて、輸入後は4割に落ち込んでいます。基本的に日本土着の血統より米血の強い牝馬との相性が良いように思います。そんなわけで、メジロ牝馬群としてはタレント不足の感もあります。
メジロシーゴーはアフリートの肌ですし、メジロポピンズはバクシンオーをストームキャット的にとらえた配合です。ポピンズはダートで走ったことがないので、適鞍があって出走する機会があれば変わり身を期待したいと思います。リンデンあたりで試してみたかったのですが、両方とも種付けの悪い組み合わせなのでやめました。

――シンボリクリスエスの産駒はなかなかメジロでは勝っていませんね

 そうですね。形は以前に比べて種牡馬に似た馬が出ることが多くなったので、どこかで勝ってくれるとは思います。ただ、あの種牡馬の産駒自体がすごい脚を持っているわけじゃなく、手堅い先行の中で勝ち星を地道に重ねているタイプなので、ズバっとすごい馬が出るかはまだ分かりませんね。でも、クリスエスは大丈夫だと思います。

――2歳のメジロキャメロンはヒカルオオゾラの全妹になりますが、これは確率的に成功した配合をしたということですか

 そうですね。でも、これを付けたときはまだヒカルオオゾラが活躍する前で、マンハッタンカフェも産駒が走るようになる前でした。マンハッタンカフェの産駒はゴツいというか馬格が出るので、ゴツい繁殖牝馬に付けてしまうと、幅ばっかりあって脚が曲がったような馬が出てしまいます。ですから、マンハッタンカフェの相手に薄めのトニービンの肌を選んだという理由もありました。

――マンハッタンカフェは距離的に長いところかなと思っていたら、意外と短いところも出ていますね

 そうですね。ただ、1200以下の距離で勝っている産駒は過半数が牝馬なので、牝馬的な瞬発力が上手く出たのだと思います。ダンスインザダークの牝馬でマイルで強いの馬が出るのと同じ理由かと思います。
 牧場のマンハッタンカフェ産駒で一番手応えが良かったのがメジロシャレードだったので、来年はメジロジョーンズあたりに付けてみたいなと考えています。ただ、マンハッタンカフェも今年のシーズンの後半は種付け休んでいるので、来年復活してくれればいいですが。

――タニノギムレットはどうですか、メジロジェラルドがいい走りを見せていますが

 これもちょっと手先硬く出るので、クラブフットが多く出る種牡馬ではあると思いますね。だから、うちの牧場の産駒はほぼ全馬なっていますね。あと、ブライアンズタイムの系統は傾向が分かりづらいので、グッドルッキングな馬がそのまま走っているわけでもなく、見た目では良いとも悪いとも言い難い仔が多いですよね。タニノギムレットにもそういうところがあるのじゃないかなと思っています。
ジェラルドも生まれてから洞爺に輸送するまでの間、目立って良いとは感じませんでした。ただ、メジロのギムレット産駒は4頭出走して3頭勝ち上がっており、ジェラルドが勝ち上がれば100%の勝ち馬率になります。統計的にはギムレットは勝ち馬率が低めながら上のクラスの競走馬が多いので、メジロ牧場の場合は良きにつけ悪しきにつけ繁殖牝馬のアクの強さが出ていると思います。

――メジロワーロックはそういった意味でどうだったのですか

 目だけ見たらタニノギムレットっていう感じはしましたが、全体的には母系が出ているかな?と思いました。正直ギムレット産駒の見立ては苦手なのでよくわからない馬でした。

――ワーロックはレースぶりや馬体をみてもブライアンズタイムらしい感じがしますね

 最近そうなってきましたね。1勝するまでは柔らかいメジログラフの血統だなという感じはありましたが、そのあとの走りが完成形なのか、疲れがたまっていたりするのかは分からないですね。

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